約束通り再掲

そんなわけで睡眠薬入りオレンジジュースのSSをサルベージ。
かつて拍手のお礼画面で公開していたものなので、たいした話ではないです。ていうか、ネタです。
 

/その1
「お邪魔しま〜す」
「いらっしゃい、那智くん。喉かわいてない? よかったらこれ飲んで」
 と、テーブルに置かれたのはオレンジジュースだった。上品なグラスと綺麗な氷が見るからに涼しげだ。
「美味しそうですね。外は暑かったし、自転車とばしてここまできたから、丁度いいです」
 いただきます、と言って那智はストローに口をつけ、ひと息に3分の1ほど飲む。が、グラスをテーブルに戻したくらいから体に異変が現れた。
「れ? 急に、眠くなってきた……?」
 ソファの上でゆっくりと那智の体が傾いていく。
 次第に傾き、霞んでいく視界の中で那智は見た。司が悪戯っぽい笑みを浮かべているのを――。
「先輩、まさか……」
「ええ、ちょっと眠くなる薬をいれてみたの」
 さらに優雅な笑みを伴って言う。
「何で……?」
「もちろん、普通じゃできないことをするためよっ」
「いや、そんな危ない発言、胸張って言われ……ても……。すぅ……」
 抵抗も虚しく那智は眠りに落ちた。
 ほどなく小さな寝息を立てはじめたのを確認すると、司は那智の眠るソファの横に膝をついた。
「ごめんね、那智くん。時にはどんな危険なことでも、周りの期待に応えなければならないときがあるの。ふふふふふ……」
 意味不明なことと怪しげな含み笑いを漏らしながら、まずは手はじめにと顔を寄せる。
「すぅ……すぅ……」
「ふふふ……」
「すぅ……すぅ……」
「む……」
「すぅ……すぅ……」
「……」
 ……。
 ……。
 ……。
「く……っ。寝顔があまりにもかわいくて手が出せないわ……」
 気づいたら朝だった。

 

/その2
「はい、那智くん、オレンジジュース」
「ありがとうございます」
 いただきます、と言って那智はストローに口をつける。途端、また那智の体に異変が現れた。
「ぐあっ。また性懲りもなく……」
「ええ、そうよ。わたしは一度決めたことは絶対にやり遂げるのよ……」
「僕に何かしたら……、絶交です……から……。すぅ……」
 その言葉を最後に那智の身体はソファに崩れた。
 司はそっと那智に近づく。
「うふふ、絶交だなんて子どもみたいなこと言って……」
「すぅ……すぅ……」
「絶交……?」
「すぅ……すぅ……」
「………」
 ……。
 ……。
 ……。
「本気だったらどうしよう……?」
 気づいたら朝だった。

 

/その3
「はい、那智くん、オレンジジュース」
「……」
 のっけから疑いの眼差しを向ける那智
「だ、大丈夫よ。今日は何も入れてないから」
「ホントですか〜? だったらいいですけど。……あれ? 先輩、今日はストローはないんですか?」
「あら、そうね。忘れてたわ。直接飲むのも少し下品よね。ちょっと待ってて。すぐに取ってくるわ」
 そう言って司はキッチンに向かい、自分の分と合わせて二本ストローを取って戻ってきた。
「いただきます」
 行儀よくそう言って那智がオレンジジュースを飲むのを見ながら、司は自分もグラスに口をつけた。
 程なく睡魔が襲ってくる。
「あれ? 何でわたしが……?」
 が、それは司の方だった。
「やっぱり入れてたんですね。さっき僕と先輩のグラスを入れ替えておいたんです」
「そ、そんな……」
 次第に司の意識が薄らいでいく。
(じゃあ、わたしが那智くんに……? そんなことになったらわたし……)
 ……。
 ……。
 ……。
「うおっ。寝ながら笑ってる!? ちょっと怖いかも……。よ、よし、今のうちに逃げるか」
 気づいたらひとりだった。

 

/その4
「はい、那智くん、睡眠薬入りのオレンジジュース」
「て言うか、もうあれですね。薬物混入は隠す気さらさらないわけですね」
「待って、慌てないで。まずはこうするの」
 そう言うと司はふたつのグラスを数回、素早く入れ替えた。
「そして、わたしが目を瞑っているから、那智くんも同じことをするの。……はい、やったわね? じゃあ、これでどっちが睡眠薬入りかわからなくなったわ」
「要するにロシアンルーレットなわけだ。先輩、もう完全に趣旨を見失ってますね。……いいいでしょう。じゃあ、僕はこっちを」
「わたしはこっちね」
 それぞれグラスを選ぶ。
「乾パ〜イ」
 司が嬉しそうに言った。
 いったい何に乾杯してるのだろうと思いながら、那智がグラスを合わせた。ほぼ同時にふたりはグラスに口をつけた。
 そして――、
「く、くそ……。こっちだった、か……」
 那智がソファに倒れた。
「ふふっ、どうやらそっちが当たりのようね……って、あら?」
 そう言っている最中、司も睡魔に襲われ、ぐにゃりと視界が揺らいだ。だんだんと意識が遠のいていく。
「もしかして、間違えて、両方に入れたの、かし……ら……?」
 ぱたり、とついに司も崩れ落ちた。
 ……。
 ……。
 ……。
「司ー、インターホン鳴らしても出ないから、勝手に上がらせてもらったよ……って、何これ? 心中!?」
 起きたら円に怒られた。

 
以上。
 

本日のweb拍手レス〜♪(12日16:30までの分)

−11日−
14時〜
>>道化師さん
 アルマジロ!? もうそのまま転がって前に進んでみてはどうでしょう?(笑 佐伯さんのお友達は日本人ですよ。前回の話にちゃんと書いてあるのですが、かなり間があきましたからね。忘れていてもむりはないかも。シィエラも機を見てまた書かないと。あれはあれでお気に入りのキャラのひとりなんですよね。

よしゃ、作れ作れ恭嗣よ。わけのわからない食事とやらを(何

 別に弓月くんが朝食を作っても、詳細情報が入ってくるわけではありませんよ?(笑
15時〜
>>熊(kazu)猫さん
 予想通りでしょうか? でも、さて、どうでしょうね(何
16時〜

やっぱり(容姿的に)男の娘なんだろうなぁって読んだら的中だった

 まだまだわかりませんよ? 容姿だけじゃなくて、女の子の服まで着る本ものの男の娘かも?(何
18時〜

更新お疲れ様です。まあ、友人の男の娘が佐伯さんをどう思うかは別として、佐伯さんにとっては男の娘だと感じたから、別段弓月氏に詳しい関係を言わなかったと感じた。

 ありがとうございます。うーん、この辺りは次回の話に触れる部分なので、何とも答えようがないですね。正解かどうかは次を見てのお楽しみってことで。

不憫な浜中よ…… 久しぶりに思い出されてもひどい扱いか。安らかに眠れ。

 よく見たら"あれ"扱いですからね(笑 とは言え、弓月くんは浜中君を気に入っているみたいですが。
19時〜

浜中クン顔出さないのに名前だけはよく出てきますね(笑

 そうでもないような? ここ最近は作中で出していないし、先日久々に日記でちょっと話題にのぼっただけじゃないかと。

ほんとに「男の子?」なんですね(笑) ってか冒頭の描写からしてキリカって毎朝空調整えてからゆっきー起こしてるんですか? なんという良妻、ゆっきー爆発すればいいのに(笑)

 確かに弓月くんも女の子を連れてきたのだと思ったくらいですからね。疑問符つきなのも頷けますね。空調をつけるのは朝の支度をする佐伯さん自身が寒いからというのが大きいです。とは言え、朝起きたらリビングに暖房が効いている弓月くんにとっては幸せな話ですよね。
21時〜

やっぱり男の娘だったか(笑 因みに、これは〜>突っ込まれるからですね、わかります。でもこの時点ですでにデレてると思うんだ。佐伯さんが隠すまで凝視してたし。昔の彼はこんなじゃなかった(笑

 や、そのへん不自然になってもカッコつきで説明しておかないといけないかな、と思いまして。弓月くんは、思わず呆然としてしまったとか、見惚れてしまったとか、そんな感じだと思ってください(笑 ま、だいぶ体性がついたのは確かですね。
22時〜

くよーさんくよーさん、弓月くんはホントかわいい性格になりましたよね、ククク。それにしても浜中君二号ですか。また弓月君に籠絡(笑)されてしまうのか!?

 前は嫉妬したり、佐伯さんの過去の人間関係を気にしたりなんてこと、ほとんどありませんでしたからね。……浜中君2号でもなければ、篭絡したこともないわぃ(笑 とは言え、浜中君は一時期弓月くんのことを心配したりしてましたけどね。
23時〜

俺の話しを聞け〜っ!

 普段どんだけ無視られとんだ(笑
 
−12日−
11時〜

更新乙ですー

 ありがとうございます。そして、お待たせしましたー。