このラノについて 後編

そもそもこのラノの公正性に関してはどこまでも疑問符がつき、絶対に公正にはなりようがない気がしています。
 
ひとつは、協力者がすべてのラノベを読んだ上で投票しているわけではないという問題。
まだ読んでいない作品の中にもっと面白いものがあるかもしれない、という後期クイーン問題にも似た問題があります。
 
尤も、これをできるかぎりなくすために、年間に数百冊も読み、偏らない感想を発信している人を協力者に選んでいるのだろうと思います。
 
もうひとつは、web投票の存在。
web投票に割かれている割合は少ないとはいえ、やはりSNSでフォロワーが多いほうが投票に動いてくれる人は多くなります。
数百、数千のフォロワーしかない作者は、万単位のフォロワーを抱える作者には太刀打ちできないわけです。
 
ちょっと考えただけでも公正性を阻害する問題はすぐに思いつきますね。
とは言え、このラノなんてイチ出版社がやっているだけのお祭り、販促本の製作だと言ってしまえばそれまでなのですが。
 
その一方で、今のラノベ界隈は「〇〇で△位!」みたいな文言を売り文句にしようとする傾向があります。
それを考えれば「このラノで〇位!」なんてのは、最上級の売り文句になるわけです。
 
もっと突き詰めると、読者側の「ハズレを引きたくない」という傾向もあります。
「面白くない作品にお金と時間を使いたくない」という思いが、「〇〇で△位? じゃあ、面白いにちがいない」につながっていき、レーベル側も箔付けに躍起になるという構造ですね。
 
そのあたりは長いタイトルにも表れています。
どうかしたら中盤くらいまでの展開がタイトルだけでわかるので、「あ、これ自分の好きな話だ」と、手に取られやすくなります。
 
九曜なんて古い人間だから、書店をブラウジングしてインスピレーションで本を買うのは好きなんですけどね。
それで面白い作品に出会えば大歓喜、ハズレだったら自分の目が節穴だった、で終わり。
 
でも、もう数年前からそんな読者は減っていて、このコロナ禍でさらにそれが加速していくでしょうね。
ランキング重視の傾向とともに。