だいたい合っていればいい『シソーラス』

シソーラスとは何? との質問をいただきましたので、少し解説を。
 

シソーラスとは?

シソーラスというと世間では類語辞典のことを指すことが多いです。
でも、図書館学では少しちがいます。
 
では、何か?
正直よくわかりません(何
 
いや、だって、資料によって「これらをシソーラスと言います」だったり「シソーラス構造をとっています」だったり、微妙に語句の使い方がちがうんだもん。
なので、そのへんを曖昧にしたまま進めます。
 

自然語と統制語

普段皆さんはGoogleなどで検索する際、調べたい単語を検索ボックスに入れていると思います。
これはキーワード検索で、ボックスに放り込まれた語句は『自然語』と言います。
 
でも。
でもですよ?(城塚翡翠
 
例えば、貴方がデパートについて調べたいので"デパート"で検索していたとします。
でも、ほしい情報のページがすべて"百貨店"と表記していたらどうでしょう?
 
そう。このページは引っかかりません。
ほしい情報には辿り着けないのです。
 
これが『検索漏れ』。
 
これは図書館の蔵書検索でも同様です。
タイトルに"デパート"と入っている本は検索結果に出てきますが、"百貨店"と表記されたものはヒットしません。
 
ついでに言うと、よけいなものが引っ掛かることもあります。
このデパートの例では『公害デパート : イタイイタイ病 その後の富山県』がそれになります。
 
こういう検索から漏れたり、よけいなものがヒットしたりを少なくするためのものが『統制語』です。
 

件名

統制語は、別名『件名』とも呼ばれます。
サブジェクト語、となっている図書館も見たことがあります)
 
図書館ではすべての本に対し、主題を見極め、何について書かれたものかわかるようにしています。
 
例えば『戦前大阪の鉄道とデパート : 都市交通による沿線培養の研究』という本には、"百貨店"と"鉄道"のふたつの件名が振られています。
タイトルに"百貨店"という単語は含まれていませんが、"百貨店"で件名検索すればちゃんとこの本はヒットしたでしょう。
 
こうやって統制語を使って検索できるようにすることで、検索漏れを少なくしているわけです。
 
因みに、この主題の見極めはそれぞれの図書館が勝手気ままにするものではありません。
そんなことをすれば図書館ごとにバラつきが出てしまいます。
 
図書館業界には巨大なデータベースがあります。
図書館が新刊を購入し、その情報を自館の蔵書として登録する場合はそこから書誌情報を引っ張ってきます。
 
もしまだ書誌情報がない場合は、どこかの図書館が作り、それを全国の図書館で共有・利用します。
作った図書館は責任館となり、「これ主題を読み違えていますよ?」「この作者、同姓同名の別人ですよ」と他館から指摘や問い合わせがあれば、責任をもって書誌調整を行うのです。
 
こうして巨大なデータベースは精度を上げていきます。
 
ただ、すべての図書館のすべての本にちゃんと件名が登録されているかと言えば、そうではない部分もあります。
 
小さな町の図書館はまだ整備が行き届いてないかもしれません。
逆に大きな市の中央図書館だと、蔵書量が多いが故に古い図書は登録が後回しにされているかもしれません。
 
便利だけどまだまだ課題があります。
 

件名検索

さて、この便利な件名検索はどうするのか?
 
図書館の蔵書検索の画面をよく見ると、キーワードを放り込むボックスの横にプルダウンメニューがあります。
ここに『件名』がありますので、これに変えておいてから検索すれば件名検索ができます。
 
とは言え。
とは言えですよ?
 
最初から件名がわかっていることは少ないと思います。
普通の人は『基本件名標目表』なんて目にすることはまずないでしょう。
(参考資料のコーナーに置いているかもしれませんし、カウンタに言えば見せてくれるかも?)
 
なので、まずはフリーワードで検索し、これだと思う本の書誌情報を開きます。
 
そのページを上から順に見ていくと、タイトル、作者、出版者、書架の場所、といった情報が載っています。
たいていの人は、ほしい情報はこれですべてだと思ってしまいます。
 
さらに下を見ましょう。
すると、本の大きさ、ページ数、付録の有無、目次、といった情報があり、そこに『件名』もあるはずです。
 
前述の本では"百貨店"と"鉄道"です。
ここにはリンクが張ってあるので、百貨店・デパートについて調べているなら"百貨店"のほうを、鉄道について調べているのなら"鉄道"をクリックしましょう。
 
そうするとそれぞれ"百貨店"と"鉄道"を主題とする本がずらっと出てくるはずです。
 
この統制語には上下関係があり、上にいくと範囲が広がり、下に行くと狭くなります。
いい例がぱっと浮かばないのですが、昨日見た資料では、「図書 - 稀本 - 豆本」という流れがありました。
 

まとめ

では、結局図書館学においてシソーラスとは何か?
 
これまで話したように、検索漏れを少なくするための類語関係や、検索範囲を広げたり狭めたりする上下関係。
こういった体系的な言葉の関係をシソーラスと呼んでいいのかな、と思います。