読了

エイルン・ラストコード -架空世界より戦場へ-』(東龍乃助)、読了。

 
舞台は西暦2070年代。
謎の巨大生命体マリスと人類の戦いがすでに半世紀にわたって続いている未来の地球。
ある日、その戦場に突如としてアニメ『ドール・ワルツ・レクイエム』に登場する戦闘機が現れ……。
 
というのが大雑把な導入部。
 
読み終わってみれば、文句なく面白かった作品です。
ただ、安易にお薦めできるかというと、決してそうではありません。
なぜなら前半の展開があまりにも読んでいて辛いからです。
 
例えば、ヒロインの扱い。
 
クィーン級のマリスを倒せる機動兵器は一機しかなく、それに乗れるのはメインヒロイン、セレンしかいません。
この場合、人はセレンをどう扱うでしょうか?
普通は唯一無二の人材なのだから特別な待遇を与えるでしょう。
 
でも、この作品では違います。
セレンは軟禁に近い状態で管理され、戦うのが嫌だと泣き叫べば殴りつけてでもコクピットに放り込まれます。
逃げたり命令違反をすれば懲罰プログラムがはたらき、戦闘が終わるまで定期的に激痛が与えられる。二度とそのような気を起こさないように、と。
 
人はまったく逆の選択をしましたが、それも無理からぬことなのかもしれません。
何せ彼女しか対抗する手段がなく、彼女がいなければ一方的に蹂躙され、化け物に食い殺されるだけなのですから。
 
例えば、突如として現れたアニメキャラ、エイルン・バザットという名の少年。
 
彼はその戦闘機の圧倒的な性能を以て、戦況を一気に逆転してしまいました。
この場合の彼は?
普通なら賞賛されてしかるべきでしょう。
 
でも、彼は助けたものたちから罵倒されました。
なぜもっと早く出てこなかった、そんな兵器があるならとっとと出せよ、その間に何人死んだと思ってるんだ、と。
 
彼は誰にも感謝されず、見せ場がくるまで超兵器を出し渋ったヒーロー気取りのアニメオタク扱いです。暴力すら受けます。
でも、それも化け物と種の存亡をかけて死闘を繰り広げている世界なら仕方のないことなのかもしれません。
 
セレンは機体のダメージがそのまま自分にも与えられる非人道的な機動兵器にむりやり乗せられ、
エイルンはアニメキャラとして自分のすべてを否定される。
前半はそんな読み手としては目を背けたくなるような展開が続きます。
 
でも、それは後半に一気にひっくり返ります。
素晴らしい爽快感とカタルシスです。
 
やがてふたりは出会うべくして出会い――そうして後半の戦いへと雪崩れ込むのです。
救われることよりも救うことを選んだ少女は泣きながらも戦場に赴き、少年はその少女の窮地と境遇を救うために駆けつけ――。
 
読んでいて辛くなる部分はありますが、作品全体を通して見れば非常に面白かったです。
読んでよかったかどうかをトータルで考えられる方はぜひ手に取ってみてください。
 

本日のweb拍手レス〜♪(14日20時までの分)

−14日−
0時〜

その女、小悪魔につき―の文庫本1,2巻とも読破しました。とても丁寧な描写で感動しました。3巻も楽しみ

 購入と読了、ありがとうございます。webでは早く書き上げて、早くアップしたいという思いがはたらいてしまうせいで、どうも描写が雑になってしまう傾向があるようです。書籍版ではそのあたりを修正できているかと。3巻はいつになるかわかりませんが、早く書いて担当さんに見てもらおうと思っています。