『Simple Life』、ミニSS

ラノベのラストシーン風に書いてみました。
 

 4月。
「香椎っ」
 春休みがあけた新年度最初の講義の日、香椎信(かしい・しのぶ)は大学の門をくぐったところで呼び止められた。
 振り返れば同じクラブに所属する蓑原が駆け寄ってくるところだった。
 彼は香椎よりもひとつ下の学年だが、受験の際に一浪しているので、実際には同い年だ。学校もクラブも上下関係には特にうるさくもないので、普段から呼び捨てで呼び合っている。
「香椎、お前、片瀬さんと同じ高校だったよな?」
 蓑原が追いついてきたところで、ふたり並んで歩き出す。
「ああ、あのお嬢さんとは同じ学校どころか、同じクラスだったな」
「春休みに考えたんだが……決めたぞ。俺は片瀬さんに告白する!」
「……」
 香椎は、彼が何を言ったのかすぐには理解できず、結果として沈黙してしまった。
「俺は耐えられないんだ。あんなきれな人が、深い悲しみに沈んでる姿が。過去に何があったか知らないが、俺が癒してみせる。笑顔を取り戻してみせる。そのためなら俺は命をかけられるっ」
 蓑原の、妙に芝居がかった一大決心を聞きながら、香椎は片瀬司のことを思い浮かべていた。
 彼に一年遅れて美大に入学してきたとき、片瀬司はかつて“学園一の美少女”“聖嶺のアイドル”と呼ばれていた頃の明るい雰囲気はどこにもなかった。常に深い悲しみとともにあり、いつも遠くを見ているような目をしていた。笑うときも力なく、儚げな笑顔を見せる。それはそれで別の魅力があったが、やはり本来の彼女らしくなかった。
 ある程度の事情を知っている香椎は、それも無理はないだろうと思い、あまり過剰な心配はせずに静かに見守っていた。
「だから香椎、フォローしてくれ」
 要するに蓑原は、告白の援護射撃を頼みたいらしい。
 さて、どう言ったものか――と、香椎は思案する。
 と、そのとき、
「おはよう」
 迷いのない涼やかな声。
 噂をすれば何とやら。足を止めて振り返ってみれば、片瀬司だった。ただし、そこにはついこの前まであった憂いの表情はなく、自信にあふれた美貌があった。
「香椎くん、この前はありがとう。突然のことだったのにきてくれて」
「いや、かまわない。俺も久々に聖嶺の面々に会えて楽しかったよ。それにめでたいことは大勢で祝う方がいい」
「ええ、そうね。わたしもそう思うわ」
 司は同意して、微笑んだ。誰もが眩しくも憧れる、春の陽射しのような微笑だ。
「彼女は元気?」
「元気だ。まぁ、あの日の後、少し荒れていたがね」
「そう。じゃあ、またわたしの方から連絡しておくわ。まだ自慢し足りないし」
「いい性格してるな、お嬢さん」
 香椎は苦笑した。
「えっと……片瀬さん?」
 そこで戸惑いがちに口を挟んできたのは蓑原だ。疑問形になっているのは、司が春休みの前と比べて、雰囲気が大きく違っているからだろう。
 まったくの別人のようだが、これが欠けていたものを手に入れた彼女の本来の姿だ。
 これならいずれ“大学一の美女”なり“ミスキャンパス”なりと呼ばれる日も近いだろうと、香椎は思う。
「ええ」
 司はやわらかく微笑みながらうなずいた。
「でも、3分の1ほど間違いね」
「3分の1?」
「見て」
 そう言って手の甲を見せるようにして左手を示した。彼女が見せたかったのは指だ。長くきれいな指。その薬指に銀のリングがあった。
「まさか……」
「そうよ。2月にね、彼が帰ってきてプロポーズされたの。もうすぐ姓が変わるわ」
 確かに彼女は片瀬司本人であり、今は“片瀬”だが、近く“片瀬”ではなくなる。
 故に、3分の1。
「じゃあ、わたし、先に行ってるわ。また後でね」
 司はふたりの間を抜けて、颯爽と講義棟の方へと向かっていった。
 それを呆然と見送る蓑原と、そして、彼を気の毒そうに見つめる香椎。
「ヤバい。俺、惚れ直しそう」
「それは勝手だが、彼女はもすぐ既婚者だ」
「あぁ、そうだった……」
 そこでようやく蓑原はがっくりと項垂れた。

 
半分くらいは洒落。でも、きっとこんな感じだろうなぁ、と。
 

本日のweb拍手レス〜♪(4日21時までの分)

−3日−
21時〜

Topの歌詞への答え:届きませんよww(鬼畜 日記の事:面白い記事? 開き直ればいいんだよ 開き直って・・・・・・・散れ(ぉぃ 供養ぐらいはしてあげるから(心の中で)

 切ない歌なんだから、そのくらい届かせてやれよと(笑 やーまー、いっそ開き直れたら楽なんですけどね、やっぱり文字を書く以上、楽しんでもらいたいなぁと思ってしまうわけです。あと、まだ生きてるんで、供養しないでください。

どまww なんとなくどまww

 ど、どま……?
23時〜

九曜。今年もお疲れ。 安らかにえいe・・・・・・ま、とりあえず寝ちゃってください。俺も眠いんで

 今年もまだはじまったばかりだというのに……。というか、なんでみんな九曜のこと、死なせたがるっ(笑 とりあえず疲れをためないためにも、睡眠時間をしっかりと取りたいと思います。
>>WindVoice氏
 変な新年の挨拶ありかとー(笑 あけましておめでとうございます。
 確かに普段から一緒にいる佐伯さんは、全手札オープン状態かもしれませんね。でも、最後に残っている実力行使こそが最大のワイルドカードでしょう。持っているのをちらつかせるだけで、弓月くんにとっては恐怖です(笑
 
−4日−
0時〜

更新お疲れ様です、続きも楽しみにしています。

 ありがとうございます。また更新した際には、ぜひ読んでやってください。
1時〜

俺どっちかっていうと日記みてバスの中で吹いた、隣の知らない綺麗なお姉さんに見られて恥ずかしかった。九曜さんめ!w ということで日記のほうも全て俺にとっちゃストライクなんで変わらないでね〜、誇張評価でもない!九曜さんが姉のかわりだったら・・・

 九曜が悪いのかっ!?(笑 ていうか、日記で笑えるところってあったっけ……? でも、まぁ、もうちょっと頑張って、みんなが楽しめる日記にしたいですね。
 九曜が姉? それは、うぅん……(謎
7時〜

明けましておめでとうございます♪ 今年もよろしくお願いしますm(_ _)m それと遅れましたが誕生日おめでとうございます。月子さんは昔は素直な子だったのですね……なんでこんなに飛び散った性格に(ノ_<。)《ぁ 正統派(?)だった貴理華も今や二代目司先輩ですしw《笑 ――

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 ええ、昔の月子さんは非常に女の子らしい女の子だったのですよー。うん、確かに飛び散った性格になってますね、今は(笑
 いや、貴理華は最初から正統派、かつ、ぇろいというコンセプトでしたよ。むしろ司先輩は本編ではぇろくないと何度言ったら(ry
 人気投票SSは、あそこまで書いたはいいけど、先が思い浮かばなくて……。さすがに今回は砂倉さんの見せ場がある、はず?(ぇ
12時〜

大変、面白いです。

 ありがとうございます。
14時〜

さえきんに続いて、ほうりゅんまでっ!! 弓ちゃんの苦労に乾杯っww

 変なニックネームつけるな、さえきんとかほうりゅんって(笑 さて、弓月くんはこの包囲網をどう脱出するのでしょうねぇ。
18時〜

Aaaaaaaaamaaaaziiiiiiiiing Graaaaaaaaceee

 アメージング・グレイス? 聞いたことあるような……。歌だっけ?