『[映]アムリタ』(野崎まど)、読了。
[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)posted with amazlet at 16.07.17
あらすじ
芸大生の主人公、二見遭一(ふたみ・そういち)は、ある日、自主製作映画に参加しないかと誘われる。
監督は天才少女と名高い、最原最早(さいはら・もはや)。
ひとまず返事は保留し、絵コンテだけを預かる。だが、帰宅後、それを読みはじめた瞬間意識が飛び、気がつけば丸二日以上それを読み続けていた。
これはいったい何だ?
どんな映画が出来上がるというのか?
遭一は最早への興味もあり、映画『月の海』の撮影に参加することを決めるのだが……。
魅力
『死なない生徒殺人事件』に引き続き、この作品を読んでみました。
野崎先生が手掛ける作品の魅力のひとつは、軽妙な文章だと思います。
ただ、よく見れば美少女ゲームのテキストや主人公の語り口に似ている気がしますね。妄想を交えて心の中で好き勝手しゃべっている系の。
でも、そのあたりは物語が進み、核心に向かうにつれて主人公の真剣度が増して、薄まっていきます。
登場人物同士の洒落た会話も魅力のひとつでしょうね。
特にこの作品においては、天才少女・最早がボケ倒すので、その傾向が顕著です。遭一と最早のやり取りを読んでいるだけで楽しいです。
と言いつつ、九曜がいちばん気に入っているのは、遭一が想いを寄せる女の子(最早ではない)に告白しようとするシーンですが。
女の子は鋭い、というか、強いなぁと痛感させられる一場面です。
深まる謎
作中、自主製作映画は、拍子抜けするくらい順調に撮影が進み、無事完成に至ります。
でも、制作の順調さとは裏腹に、いくつもの謎が顔を覗かせます。
意識を刈り取る絵コンテにはじまり、『月の海』の試作品と思しき『アムリタ』の存在。事故死したという最早の恋人、遭一が殺されるのではないかと心配する先輩。
そして、最早が高校生のときに作ったという作品。
遭一はあるきっかけからその映画を視聴し、恐るべき体験をします。
自分たちが作った『月の海』とは何なのか? 天才・最原最早はこの作品にどんな意図をもって、どんな仕掛けをしたというのか?
こうして遭一はこの謎を追うことになるわけです。
この作品をどう読むか
言ってしまえば、この作品はファンタジィです。
『死なない生徒殺人事件』もたいがいその傾向がありましたが、この作品はさらに理屈抜きですね。
なので、どうしてこんなことができるのか? は考えないほうがいいです。
それを押し切るだけの勢いがあるとまでは言いませんが、この作品を読むにあたってそこは目をつむってもいいと思います。
結末
この作品には最後の最後にどんでん返しが待っています。
しかも、賛否両論ありそうな感じの。
この『[映]アムリタ』は、メディアワークス文庫賞受賞作品であり野崎先生のデビュー作のようで、だからと言ってしまっていいのかわかりませんが、一般受けとか考えていないとんがった内容になっているのだと思います。
最原最早の無邪気で恐ろしい発想は、実に天才らしいと言えますが、人によっては大きな不愉快さが残るかもしれませんね。
正直言えば、九曜もそちらの思いが強いです。
でも、それ以上に野崎まどという作家の原点に触れた感動のほうが大きいですね。
本日のweb拍手レス〜♪(17日14時までの分)
−17日−
0時〜
それがですねぇ、私のヲタ友は鍵アカなのでフォローしてないと読めないんですよ。オープンなアカウントでぇろいことや腐ったことつぶやかれても困りますがー笑
あ、聞いたことありますね。身内にだけ公開するモードという認識でいいのかな? それは確かにアカウントがいりますね。……わかった。九曜も鍵かけてあれなショートストーリィを投稿すればいいんですね(ぉ