エスエス

書く書くと口だけじゃなくて、とりあえず書いてみよう企画第一弾。
藤間と一夜の邂逅編その1.
 

 母から祖父が死んだと電話があった。
 これが母方の祖父ならまだしも、僕の父親に当たる人のほうなのだから、そんな訃報を聞かされたところで何の感慨もない。
「そんなわけで、明日大々的に社葬があるから、真も出席しなさい」
「は?」
 続く母の言葉に耳を疑う。
「なんで僕が? ていうか、まさか母さんも?」
「仕方ないでしょ。あの人が必ず出席するようにって言うんだから」
 母の口調は、突然の法要にも都合をつける社会人のそれだった。
 それにしても――実父であり会長である人の葬儀だから盛大にしたい気持ちはわからないでもないが、自分の愛人まで呼ぶかよ。まぁ、3人もの愛人を公然と囲っていたらしいから、男としての云々みたいなものを誇示したいのかもしれないが。
「葬式の会場で修羅場とかないだろうな」
「ないない」
 母はあっけらかんとして否定する。
「そんなことになる性格なら、こんな生き方選んでいないわ」
 それもそうか。向こうだって、テレビドラマの如く「奥さんと別れて」みたいなことを言ってくる人間を愛人に選んだりしないだろう。
 母は愛した男と良好な関係を築き、子どもを作り、それを利用してではあるが自分の能力を存分に発揮できる社会的地位を獲得した。ある意味では女としての幸せを満喫しているわけだ。そこに正妻という立場があるかないかの違いだけ。
 母のそういうしたたかさは、僕も見習っている。利用できるものは利用しないと。
「こっちは明日も普通に学校なんだけどな」
「休め休め。どうせ一日休んだくらいじゃびくともしない成績なんでしょうが」
「まぁね」
 頭の中で時間割りを思い出してみれば、明日は槙坂先輩と同じ授業がある曜日だった。
「学校の制服でいいわ。遅れないようにね」
 そうして母は言うだけ言って電話を切った。
 正直、面倒だ。
 だけど、いい機会でもある。一度会っておきたい人物もいることだしな。
 
 翌日の社葬は大きな葬儀所で派手に行われた。大御所芸能人などが亡くなったときに、よくニュースで映し出される場所だ。さすが大企業の社葬といったところか。贈られた花には世界に名だたる複合企業体・宇佐美グループの名もあった。
 壇上に豪華な祭壇があり、その上には巨大な遺影が掲げられていた。
 僕と母は近親者席に座るよう指示された。
 そこから僕は遺族席を見る。喪主には当然、僕の父に当たる人。正妻に、嫡子たる三姉妹。そして、末席に僕の目当ての人物がいた。
 遠矢一夜。
 眼鏡の似合う鋭利な相貌は、ひと言で言ってしまえば知的美青年といったところか。驚いたことに彼は、遺族席の末席に座りながら、我関せずとばかりに本を読んでいた。なかなか豪胆な神経をしている。
 僕が彼に注目する理由、それは彼が僕と同じく庶子であることだ。
 つまり愛人のうちのひとりとの間にできた子。だが、不幸にも彼は母親と死別し、今は本家に引き取られているという。僕の異母兄。勿論、半分だけ血がつながっているという点では、本家の三姉妹も同様に僕の半姉なのだろうが、やはり庶子である彼のほうが気になる。
(なるほど。彼が、ね)
 と、目当ての人物を目視で確認したところで、近づいてくる気配を感じた。
 一組の母娘だった。
 母親のほうは和装で、その上品な雰囲気はまるで高級料亭の女将だ。彼女と母が無言で会釈を交わしたことで、僕はようやくその母娘が何ものか理解した。――こちらと同じ、愛人とその子だ。
 僕は娘のほうを見る。
 こういう場所にはぴったりな喪服の如き黒いセーラー服姿。足は黒のニーソックスに包まれ、短いスカートの裾との間にわずかに肌が覗いている。この手のスタイルにフェティシズムを感じるやつらが見たら歓喜しそうだな。
 僕の知る誰かさんを思い出させる長い黒髪で、前髪はきれいに切りそろえられている。その下にある面貌はというと、あの遠矢一夜の異母妹だけあってよく整っていた。
 そして、同時に僕にも似ていた。
 ただし、何年か前の僕だ。
 彼女はこの世の森羅万象が面白くないかのような、心底つまらなさそうな顔をしていた。何を見ても、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向きそうだ。事実、僕と目が合ったが、挨拶を口にする素振りもなく席に座った。
 切谷依々子(きりや・いいこ)。
 確かそれが彼女の名前のはず。今日、僕が会ってみたいと思っていたもうひとりの人物だ。

 
続きはまた今度。
 
本当は「明日は休む」と槙坂先輩に電話するシーンも入れようと思ったのですが、面倒なのでやめました。
でも、そのシーンを入れて、この後帰りに前髪ぱっつん娘と一緒に歩いているところを槙坂先輩と遭遇すれば、それでけっこう本編に組み込めそうな?
 

本日のweb拍手レス〜♪(21日21時までの分)

−20日−
21時〜

毎年この時期になるたびに、はじめて自分が訪れたころの最新話だった覚えがある話の更新日時を確認して愕然としているのですが、よく考えたら当然九曜さんの方が愕然度合いは高いんですよね…。ともかく14周年おめでとうございます。わたしは今年で読者歴7年目になるようです。

 別に愕然とはしませんが、飽きっぽい九曜がよくもまぁ続いているものだと、ある意味感心はしますね。今のところまだやめるつもりはないので、これからもよろしくお願いします。
>>50%&50%を推進する会 会長(自称)さん
 ええ、認める日はこないでしょう。認めると九曜がそれに応えないといけなくなるので(ぉ
22時〜

あ、僕もありますね、生首。筆箱につけてて移動教室の時に取れてました。のちに友達から「見てこれマジウケる」って言われて頭を見せられたのは懐かしい思い出ですね。

 ああいうのは丁寧に扱わないといけませんね。粗雑にするとすぐに壊れるし、壊れるとひどく間抜けです(笑 そう言いつつ、九曜はまだ外していなかったりします。ええ、まだ生首ぶら下げています。

それじゃあつんどらさんになってください。まる。

 面倒なのでツンダラで。ぺけ。
23時〜

このサイトに通い始めて三年かぁ〜はやいね!

 その3年ってこのサイトが完全に失速状態に入っているときじゃない? よくまだ付き合ってくれているなぁ、と(笑
 
−21日−
6時〜

じゃあ入会したいんで勝手に使わせてもらおうかな。「50%&50%を推進する会 一般会員(自称)」ってことで、くよーさん、会長さん、よろしくお願いします(笑

 知らん、わたしは知らんのだっ(笑