いわゆる男の娘って、女の子の恰好をした男の子? それとも、男の子の恰好をした女の子?
女装少年 or 男装少女?
下のショートストーリィはこのところサイトの更新が滞ってばかりなので、お詫びにお蔵から引っ張り出してきました。
女装趣味の少年のお話なので、読む際はその点を注意してください。
ていうか、大昔に一度日記にアップしたっけ?
休日のオープンカフェ。
そこで僕はわりかし目立つ席に座り、ゆっくりミルクティを飲んでいた。訳あって、連れ合いはいない。ひとりだ。
やがて視線を感じるようになる。
(意外に早かったな。場所がいいからか)
まずは耳を澄ます。
「なぁ、あの娘、スゲー可愛くない?」
「あ、俺もそう思って今見てたとこ」
「どれよ? ……うお、誰あれ? どこかのアイドル?」
こそこそと囁き合う声がここまで届いてくる。なかなか好感触。
今度は横目で声が聞こえたほうを窺う。
高校一年の僕より少し上、三年生くらいの男が三人、こちらを見ていた。気づかれていないと思ってか、けっこう無遠慮に僕のことを観察している。
(さて、そろそろいいかな)
僕はそちらに顔を向けた。思わぬ不意打ちに驚いている男三人。その彼らに向かって、にっこり微笑んでやる。するとひとりは赤くなって顔を逸らし、ひとりは呆然とし、でもってお調子者なのがひとり手を振ってきた。
よし――。
僕は心の中でガッツポーズをした。
こんなことをしているが、僕はれっきとした男だ。ただし、今はヒラヒラした女の子の服を着て、ウィッグもつけ、ついでに薄く化粧までしている。まるっきり女の子だ。
これが僕の趣味。
単純にかわいいもの、かわいい服が好きで、加えて生まれ持った女顔もあって、女の子の格好をするのを趣味としている。男に手を振ったりして反応を見るのは、まぁ、ついでの遊びみたいなものだ。
暇な休日はこうやって思う存分趣味を楽しむ。
まずは白星一個といったところだな。そろそろ場所を変えようか。それともいい服がないか、テキトーに店を回ってみようか。
席を立つ前にもう一度、面白い反応が期待できそうな男がいないか見回してみる。
と――、
「ん? あれは確か……」
そこに見知った顔があった。
小日向彼方(こひなた・かなた)――。
三年の先輩で直接的な知り合いではないけど、我が校随一の美女と言われる有名人で、うちの生徒なら誰でも知っている。僕も噂を聞いて見にいったことがあるし、校内で何度か偶然に見かけたこともある。
少し大人っぽくて、整った容姿は美少女というよりは、美女。背中まで伸びる長い黒髪は艶やかで、光を受けて天使の輪ができている。シャンプーのCMにも出られそうだ。いったいどんなのを使っているのだろう。おしえてほしいものだ。
さすが誰もが美人と認める正真正銘の女性だ。僕みたいな紛いものでは絶対に踏み込めない領域にいる。
ライトブルーのジーンズにキャミソールというラフな格好だけど、それが実によく似合っていた。カフェでひとりティーカップを口に運ぶ様は、まるでモデルの撮影か映画のワンシーンのようだ。
でも、ただひとつ気になるのは、その物憂げな表情だった。僕の中の小日向さんというのは、友達の輪の中でいつも楽しそうに笑顔を浮かべているイメージがあった。何か悩みでもあるのだろうか。
とは言え、彼女の表情が気になりはしても、僕がここから早く退散しなければならない理由ができたことは確かだ。
向こうは僕のことなんて知らないだろうし、男だと気づかれない自信はあるけど、知っている人間が近くにいるとやりにくい。しかも、少なからず憧れている先輩となると尚更だ。これ以上の長居は無用だろう。
僕はさっそく席を立った。
「でもな……」
その、あれだ。せっかくこんなところで会ったのだから、もう少し近くでそのお姿を拝見するくらいは許されるような気がする。僕ら一年は小日向さんに近づく機会すらないものな。
そんなわけで僕は彼女のそばを通るようなルートを取った。
オープンスペースに不規則に置かれたテーブルの間を縫って、小日向さんにさり気なく近づいた。ここまで距離を縮めたのは初めてじゃないだろうか。近くで見る彼女は遠目で見ていたのと何ら変わることなく、むしろその非の打ちどころのない美貌を僕の目に強く焼きつける。
そして、その物憂げな表情もまた鮮明になってくる。
「……」
いったい何が彼女をそうさせているのだろうか。
どうにも気になりながらも、僕がその横を通り過ぎようとしたそのときだった。
小日向さんがカップをソーサーに置き――そして、勢いよく席を立った。テーブルから離れようとしたのは、今まさに僕が最接近しているとき。
うわの空から突然の行動(アクション)。
当然、小日向さんは周りに注意など払っているはずもなく。
「え?」
「きゃっ……」
避ける間もなく、僕らはぶつかった。
僕は年下で女の子の格好をしていても中身は男。対する小日向さんは女性。弾き飛ばされたのは彼女のほうだった。
「おっと……」
だが、間一髪、僕はその腰に手を回して引き寄せ、小日向さんが倒れるのを防いだ。
「……」
「……」
身体は密着状態。
顔は至近距離。
咄嗟に取った行動とは言え、思いがけずでき上がったこの状況に、僕らはただただ無言――
「……だ、大丈夫ですか、小日向さん」
「え、ええ……」
しばしの沈黙の後ようやく交わされた短い会話がこれ。それから僕は遅まきながらようやく自分が今やっていることの恐れ多さに気づき、ゆっくりと手を放した。冷や汗タラタラ、心臓はばくばくいってる。
「ごめんなさい。周りをよく見ていなかったみたい」
「い、いえ、気にしないでください。それじゃあ……」
まさか近くで姿を見るだけのつもりが接触事故を起こすとは思わなかった。さっさと退散しないと。僕はレースで彩られたロングスカートを翻し、背を向けた。
だが――、
「待って」
逃げるように立ち去ろうとする僕を、小日向さんが呼び止めた。
「あなた、うちの学校の子?」
「……」
しまった。もしかして僕、さっき小日向さんの名前を口にしたか?
「さ、さぁ、どうでしょう……? じゃあ、私はこれで――」
「待ちなさい」
「……」
再び逃走失敗。
背中越しにぴしゃりと投げつけられた声に、僕は金縛りにでもあったかのように動きを止めた。
「学年とクラスに名前、何か委員をやっているならそれも正直に言いなさい」
「は、はい。1−4の穂村唯です。特に委員はやっていませんっ」
思わず背筋を伸ばして答える。……なんだ、このやり取りは。
「ふふっ。面白い子ね」
いや、笑ってますけどね、やらせたのはあなたでしょうが。
「ふぅん、そう」
「……」
「穂村……唯さん? それとも、唯くん、かしら?」
「ッ!?」
やはりバレた、か……?
もとより僕は女の子の格好はしても、なりきっているわけではない。もし誤解のまま声をかけられたとしても「僕、男だけど?」と、相手を驚かせてやるだけの話だ。今はバレないように高めの声を出して女の子っぽく振舞ってみたが、さすがにつけ焼刃ではむりだったようだ。それに突発的なことだったとは言え、さっき小日向さんの名前を出してしまっっている。下手を打ちすぎたな。
「どうなの?」
「……くん、です」
はい、降参。僕は諦めて小日向さんへと振り返った。
彼女は改めて僕の姿を上から下まで眺め――、
「……見つけた」
「え?」
見つけた? 何をだろう?
僕が聞き返す間もなく、小日向さんは次句を継いでくる。
「変わった格好をしているのね」
「ええ、まぁ……」
思わず呆気にとられ、曖昧に返事をする。
にしても――あぁ、終わったな、僕。よりによって憧れの人に見つかってしまうとは。
「でも、素敵な服」
「……」
「それにメイクも上手」
「……」
「髪は、ウィッグかしら?」
「……」
なんか反応が予想外のベクトルだ。
「あなた、とてもかわいいわ」
そして、これまた微妙なひと言。
普段だと言われても嬉しくないけど、女の子の格好をしているときに男に言わせるのはオッケー。
では、問題。
以下のような状況の場合は?
・僕は女の子の格好をしている
・相手は女性だ
・しかも、僕が男だと知って言っている
・その上、僕が憧れている人だ
答え。
正直微妙……
「そう。1−4の穂村唯くんね。覚えておくわ」
「……」
「じゃあね。お姫様の姿をしたわたしの王子様」
そうして小日向さんは、先ほどまでの物憂げな表情はどこへやら、思わず見惚れてしまいそうなとびきりの笑顔を浮かべると、踵を返して去っていった。
「最後のは……なに?」
その背中に僕は呆けたようにつぶやく。
うぅむ……。
本日のweb拍手レス〜♪(11日12:30までの分)
−10日−
13時〜
九曜さんは、良いも悪いもリモコン次第なんですね!
いえ、そう見せかけておいて、実は音声入力なのです。「パンチだ、ロボ」と言えばパンチをしますからね。だおたいレバー1本であんな複雑な動きができるはずがありませんよ(笑
14時〜
御影が7月に新作出しますよ。 箱マリ打ち切り決定なんですかね。
あ、ほんとだ。一度はラインナップを見たはずなのに『トリックスター』の御堂先生と勘違いしたみたいです。箱マリっ!は絶対に続きを書いてくれると思って、ずっと待っていたのになぁ。とは言え、御影先生のコメディも見たい気がします。あのタイトルならコメディですよねっ。
15時〜
小説はあんまり読みませんがサウンドノベルはよくやります。428は誰がなんと言おうと神作
そう言えば、前に『428』をやってみたいと思ったはずなのに、すっかり忘れていました。スパロボも2周目が終わったし、やってみようかなぁ。評判はいいみたいですね。
17時〜
九曜さんって 想像よりずっと背が高い方なんですね 羨ましいかぎりです。それだけ背が高いと、棚の上のものとか取りやすそうですよね
ずっと隠していましたが、実はそうなのです。でも、ここまで高いと棚の上程度じゃまだまだ低くて、やっぱり取りにくいです。
18時〜
学園都市って実在したんですね・・・ ちょっと惹かれました
ええ、ありますよ。名称が『学園都市』じゃなくても、機能的に学園都市として作られた街も多いです。九曜はこの街並みがとても好きです。
九曜さん九曜さん、やばいっす、俺スゲー事気付きました。弓月変態ラッキースケべと佐伯お嬢様が結婚したら佐伯様がめっちゃ呼びづらい名前になる!!(笑)
『変態』がつけ加えられてる!? まぁ、九曜もよく言ってるかもだけど。……『ゆみづききりか』? 確かに言いにくいけど、『さえききりか』とドッコイじゃないかなぁ?
19時〜
あくせられーたはー???(>_<)
実は最後の写真は九曜じゃなくて、あれこそがあくせられーたなのです(何 「パンチだ、あくせられーた!」
21時〜
私は学園都市の学校に通っていたわけではないですが、何回も行ったことがあるので「この風景なんだろな〜」って想像しながら小説を読んでいたので、より楽しめていました。想像通りで良かったです^^ 土地勘があるため、九曜さんの作品はイメージがしやすいです。買い物しに行く街とか、待ち合わせのメッカとか((笑)
ご存知でしたか。知っている人だと、九曜がどこをモデルにしているかすぐにわかったでしょうね。九曜はこの街並みが大好きで、4年間家から遠くても毎日通っていました。久しぶりにいくと懐かしかったり、変わってしまっているところもあったり。待ち合わせのメッカは大阪のほうかな?(笑 噴水と紀伊国屋書店前は有名どころですからね。
22時〜
九曜さんの写真?あれ?どこにも猫は写っていませんよ?
すみません。本当に猫だということがバレるのがこわくて、彼に代理を頼んだんです(何
23時〜
学園都市、、地元ですw ○○に通ってらしたのかしら・・・?
いいなぁ。あそこに住んでいるなんて。九曜も学園都市に住んで、スクータで走り回るのが憧れです。学校名は伏せさせてもらいました。ええ、その先にあるのはその学校ですね。でも、九曜がそこに通っていたかは内緒で。
学園都市の写真に驚きました。つい去年までこの辺りの学校に通ってたんです(笑)ネットのこういう偶然は妙に嬉しく感じてしまいますよね^^6,7年前からこのサイトには通ってましたが、一番の衝撃でしたのでひと言書かせていただきました〜
意外と知っている方が多くて、九曜もびっくりです。同じ場所を知っていると嬉くなりますよね。もしかしたら同じ電車に乗っていたりしたのかも? ひと言ありがとうございます。このweb拍手、もっと気軽に使ってくださってけっこうですよ。
−11日−
0時〜
知らなかった、九曜さんがテツジンだったなんて・・・。しかもポーズまで決めて。猫じゃなかったのか(=^・・^=)。ところでIS7巻は読みましたか?
「九曜でしょうか?」「いいえ。ベツジンです」 鉄人はこう力強くポーズを取っている点で、ぼーっと立っているお台場の白い悪魔より好きですね。IS7巻は、残念ながら読むのはもう少し先になりそうです。
5時〜
神戸市民としては色々とびっくり
ええ。九曜さん、大阪から神戸に通っていたのですよー。